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東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)
被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト


2009年03月30日

期待高まるメタンハイドレート

 原子力発電が多くも問題を抱える発電方式なのは確かです。それでも原子力が環境の観点から、日本のエネルギー供給を下支えするものである事は確かです。
 しかし、それだけに頼っていていてはいけません。太陽光や風力などの再生可能エネルギーの実用化も急務です。ですが、太陽光や風力は今直ぐに基幹エネルギーとなるには技術的にクリアーするべき問題が多くあります。
 そこで注目されているのがメタンハイドレートです。メタンハイドレートも石油と同じ化石燃料系の枯渇性エネルギーではありますが、二酸化炭素排出量が石油や石炭に比べおよそ半分であるため将来有望なエネルギー資源です。
 メタンハイドレートはシベリアなどの永久凍土や条件が満たされ海底等にに埋蔵されています。日本近海にも多く埋蔵されていると言われています。エネルギー資源の少ない日本にとって、これは有望なエネルギーです。研究も進められていて、大手建設ゼネコンの清水建設では、最先端のガス回収実験に成功しました。
 これからは複数のエネルギー源を状況に合わせて、上手に組み合わせていく時代となっています。

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期待高まるメタンハイドレート、環境・経済両面で慎重な技術開発を
東洋経済新報(2009/03/30)

期待高まるメタンハイドレート 「燃える氷」……神秘的なイメージを持つメタンハイドレート。日本近海の海底に約100年分という莫大な量が眠っていて、資源小国・日本が資源大国に生まれ変わる夢の資源といわれている。2008年に制定された海洋基本計画の中でも、「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」の主要テーマとして取り上げられ、注目を集めている。

 日本のエネルギー自給率はたった4%。国産エネルギーの開発は悲願だ。08年には1バレル=140ドルという異常な原油高のせいで産業界でも石油依存低下が進んでいる。とはいえ環境やコストを考えると石炭もLNGも原子力も、エネルギー需要の半分を支える石油の代替はできない。それだけに純国産の新エネルギー開発はますます重要性を帯びている。

 メタンハイドレートとは、水分子の格子状の結晶の中にメタンガスを含んだ氷状の物質。分解すると体積の約170倍のメタンガスと水になる。永久凍土や水深500メートル以上の深海底の砂層の海底面から400メートル程度の浅い範囲に存在する。0度23気圧などの低温高圧が存在条件だ。 

エネルギー大国になれない


 日本近海には、東海沖~熊野灘や新潟沖などで存在が確認されており、1996年の科学的概算によれば7・5兆立方メートルと推定される。当面の技術力で利用可能なのは半分程度だが、07年の国内天然ガス消費量885億立方メートルをすべて代替したとして、40年分程度の埋蔵量ということになる。しかし、日本の1次エネルギーの天然ガス依存度は16・5%。日本の総エネルギー需要に換算すればわずか6~7年分にすぎない。

 それでも、国産天然ガス産出量が北海道、新潟沖、千葉沖などを合わせても全供給量の1%にも満たない現状に比べれば、自前のエネルギー源を持てる意義は大きい。ただし、商業利用がすぐに始まるわけではない。天然ガスや石油のような流体と異なり、固体で水深500メートル以上という大深海底に存在するだけに、新たな採掘技術開発が必要だ。

 経済産業省のメタンハイドレート開発計画が本格的に始動したのは01年。この計画推進のため、石油天然ガス・金属鉱物資源機構と産業総合研究所の二つの独立行政法人と(財)エンジニアリング振興協会の3者によって「メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム」が設立された。

 途中、試験結果が思わしくなく資源化は無理かとも思われたが、08年3月には、カナダの永久凍土で減圧法による6日間連続産出実験が成功し、期待が一気に高まった。低温高圧という条件のどちらかを取り除いてやれば、氷状のメタンはガス化する。海底の場合、ハイドレート層にまで通したパイプ内部の海水を抜いてやれば圧力が低下し、ハイドレートの分解が始まる。メタンガスの比重は空気に対して0・55だから自然に上昇してくる。現時点での回収率は30~60%という。

期待高まるメタンハイドレート期待高まるメタンハイドレート 海底メタンハイドレート開発は日本が世界最先端だ。それでも商業化は早くても2025年ごろといわれている。09年度からスタートするフェーズ2(終了は15年がメド)では、連続産出と回収率の向上、生産量の確保が検討され、その後のフェーズ3で商業化のための技術試験、周辺海域の環境試験などが課題となる。その後、民間が引き継いで探鉱、設備投資が行われる。中国や韓国の追い上げもあるが、採取方法や採掘適地の発見などの点で、わが国に一日の長がある。欧米の研究は永久凍土のハイドレートが中心で、海洋開発には淡泊だ。

有効利用が温暖化を防ぐ

 問題は差し当たって予算だろう。産業界の期待を背景に、フェーズ2初年度の09年度予算は45億円と決まった。フェーズ1の年平均予算と比べ1割強の増額だ。だが、単年度会計の下では総投資額が見通せない。フェーズ2の海洋連続産出試験では、1回当たり100億~200億円必要との声もあり、継続的な予算計上が不透明な状況は、開発のモラールの低下を招く。

 またフェーズ1では、メタンハイドレートコンソーシアムには270人の研究スタッフがいたが、企業の事情で引き揚げられてしまうと補充がきかない。新しい分野のうえ、過去十数年の間に多くの大学で資源関係の学科を廃止したからだ。企業の側にも腰を据えた姿勢が必要だ。さらに2~3年かかるテーマでも、国費研究だけに毎年予算申請しなければならず、書類作成に忙殺されて研究に集中できないとの話も聞く。長期テーマであることは自明であり、経済、環境での期待度が高い以上、進捗報告だけで済むようにするなど簡略化の方法が考慮されてもいい。

 一方で、おろそかにされてはいけないのが環境の問題だ。メタンガスはCO2の20倍以上も地球温暖化を進行させる。だが、きちんとした管理の下に環境に配慮しながらであれば、ハイドレートのまま放置して自然崩壊によるメタン放出を招くよりは、はるかに環境にいいといえる。メタンガスは燃焼すれば石油に比べてCO2排出量は3割程度少なく、Soxは出ない。

 問題はきちんと管理できるかどうかだ。ハイドレート層を分解利用することによって、それまで氷状の固体で安定していた砂地の海底地層がどう変わるのか。またハイドレート層の下に、存在確率10%とはいえフリーガスが存在する。量が少なければ海水で分解され溶け込み、海面上にメタンガスが浮き上がってくるとは考えにくいものの、大量にあった場合、その上のハイドレート層が移動したらどうなるのか。「大深海底は未解明の部分も多く、現時点では予測がつかないことも多い」と関係者は言う。

 にもかかわらず、現時点で大規模な海底地質調査は予算に計上されていない。アメリカではエネルギー省を中心にベーリング海などで、大規模なハイドレート層の崩落による地滑りの研究を行っているという。ノルウェー沖の大規模な滑りで通常の数倍の高濃度のフリーガスが噴出した痕跡が発見されたという報告もある。日本でも下北沖で確認されている。こういった事例を軽視して経済優先の開発を行っては拙速のそしりは免れまい。水平エリアで採取すれば地滑りは起こらないという意見もあるが、何があるかわからない深海底で人工的に地層を変形させることによる環境影響調査は、現行以上に範囲を広げて行うべきだろう。

 太陽光発電や風力発電などグリーンエネルギー利用率が需要全体の2%にも満たない日本にとって、ある程度受け入れのインフラが整っている天然ガス=メタンハイドレートが、エネルギー安全保障のうえで一定の役割を持つのは間違いない。だからこそ「海底環境変化の問題を無視して開発を進めるのは危険だ。慎重を期して進めるべき」という国立環境研究所の内田昌男氏の言葉を重く受け止めたい。

(小長洋子 =週刊東洋経済)



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Posted by 昏君 at 08:44│Comments(0)玄海町
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